「ちさちゃんは,死んでなんかいないよ。ずっと,そこに,いる」。
quote:目の不自由なバーバラ・ローズさんは,電子メールを音声化して読み上げてくれるソフトを使っているが,スパムメールにわずらわされるなど苦労は多い。ウェブサイトの閲覧も障害物でいっぱいだと,多くの報告書が指摘している。いつものサイト以外はアクセスしない障害者もいるが,ローズさんはパソコンは外の世界への接点だとしてあきらめず,アクセスできるように要求し続けるつもりだと語る。
すべての障害者が一律に問題なく,ネット上の情報を利用できるようになるのは難しいが,ひとつひとつ,少しずつは解決を目指すことはできる。テレビもラジオも手紙もなくなる日は来るが,ネットワークがなくなる日は来ない。ほとんどの情報が文字情報である現在のネットワークでは,視覚障害者はかなり制限が多い。その解決法は,音声による入力と音声による出力だ。いまわたしが携帯電話のノキア7600(過去記事)を使っていていいなと思っているのが,ボイスタグによる電話をかける作業だ。ボタンを押して,登録しておいた言葉をマイクに話すと,電話をかけてくれる。あとは普通に通話すればよい。パソコンの音声による操作は,まだまだ限られた利用になっているが,それが十分な性能を持って一般的になったとき,視覚障害者の利用も促進されるだろう。
「ハロー,Navi。メールは来てる?」「…」「そう,最初のメールを読んで」「…」「ちょっと待って,それはスパムかな。スパムフォルダに移動して」「…」「次のメールを読んで」「…」「…ちさちゃんだ…。うん,続けて」「…」「そう,なんだ。うん,返信するね。録音して送って。OK?」「…」「ちさちゃん。わたしは,怒ってないよ。ううん,むしろ,喜んでる。普通なら,急にいなくなっちゃったらもう会うこともできないけど,こうしてつながっていられる。わたしは,…ごめんなさい。勇気がなかったの。だから,わたしからメールを出すことはできなかった。ごめんなさい。でも,声をきけて,話すことができて,うれしい。みんなはもういなくなったって云うけど,わたしのプロトコルにはいつでもちさちゃんはいる。ずっと,これからもずっと。OK」「…」「うん,もう寝るね。おやすみ,Navi」。
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